厚生年金を受給しながら、65歳以降も厚生年金被保険者として勤務し、保険料を支払い続けた場合、その支払い実績分が年金額に反映するのは被保険者資格喪失時(被保険者資格上限の70歳到達時または退職時)だったが、改定により、年に1回、毎年反映し増額されるようになる
参考:2020年度・年金制度改定
具体的には、8月までに納めた保険料分が10月分の年金額から反映される。10・11月分は12月に振り込まれるので、実際の受給月としては12月分からということになる(本年12月が最初の増額分給付)
なお対象となるのは65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給者であり、次の者は被保険者として保険料を支払っていても対象とならない
- 60歳代前半の「特別支給の老齢厚生年金」受給中の者
- 65歳未満で老齢厚生年金を繰上げ受給中の者
- 老齢厚生年金を請求せず、繰下げ待機中となっている者
65歳時改定 | 60歳代前半の「特別支給の老齢厚生年金」を受給しながら勤務し、保険料を支払った場合、65歳到達月の前月までの保険料支払い実績を反映させ、65歳到達月の翌月分から「本来の老齢厚生年金」の年金額となる |
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退職時改定 | 厚生年金に加入している65歳以上70歳未満の者が退職した場合、退職月の前月まで(月末退職の場合は退職月まで)の加入記録に基づき、退職月の翌月分から年金額が改定される |
70歳時改定 | 70歳以降は厚生年金被保険者になれないため、70歳到達月の前月までの加入記録に基づき、70歳到達月の翌月分から年金額が改定される |
本改定による影響
累計の年金受給額増加
退職時や70歳時の年金額は変わらないが、それまでの経過で徐々に増額されるため、累計での受給額が増える。また保険料負担の成果を早い段階で実感できることで、勤務のモチベーションアップにも繋がる
加給年金額の受給開始時期に影響
加給年金額の受給可否判定における被保険者期間月数も毎年8月分までの累計で検証されるため、退職時改定や70歳時改定を待たずに受給がスタートする可能性がある
加給年金額の受給要件の1つに「被保険者期間20年(240か月)以上」がある
振替加算の受給開始時期に影響
振替加算の受給可否判定における被保険者期間月数も毎年8月分までの累計で検証されるため、退職時改定や70歳時改定を待たずに加算が止められる可能性がある
振替加算は加給年金額の対象となるべき配偶者の基礎年金に加算されるが、その配偶者自身が20年以上加入の老齢厚生年金を受給していないことが要件の1つとなっている
「在職老齢年金」制度により一部支給停止の可能性
(「基本月額」+「総報酬月額相当額」)が47万円を超えた場合、超えた額の2分の1が支給年金から減額される
基本月額とは | 「加給年金額を除いた老齢厚生年金年額」÷12 |
総報酬月額相当額とは | 標準報酬月額+「直近1年間の賞与÷12」 |
基本月額が毎年増額されることで、そのタイミングで上記合計が47万円をオーバーし一部支給停止となる可能性がある
従来は被保険者資格喪失まで65歳時の基本月額が固定されていたため、総報酬月額相当額のみが停止判定の変動要因だった
遺族厚生年金が減額される可能性
老齢厚生年金と遺族厚生年金の受給権を同時に保有する場合、自身の老齢厚生年金が優先的に給付され、遺族厚生年金の金額の方が高い場合は、その差額が遺族厚生年金として給付される。よって在職定時改定により自身の老齢厚生年金が増額されると遺族厚生年金が減額される。合計金額は変わらないが、遺族厚生年金は非課税なので、その影響が発生する可能性がある