2019年度の年金額は0.1%の引上げと決まったが、物価上昇率には及ばず、実質的な価値は低下した。以下にその算出根拠を確認する。
- 前年の消費者物価は対前年1%のプラス
- 過去3年間の賃金変動率は0.6%のプラス
現行ルールでは、上記の場合、賃金変動率を採用する
よって0.6%引上げになるはず
しかしマクロ経済スライド調整率(本年分)が適用される「マイナス0.2%」
さらに2018年度に適用しなかったマクロ経済スライド調整率(持越し分)が今回適用「マイナス0.3%」
こうして2019年度の改定率は次の算式により0.999と算出される
前年度改定率 | 賃金変動率 | マクロ調整率 (本来分) |
マクロ調整率 (持越し分) |
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0.998 | × | 1.006 | × | 0.998 | × | 0.997 |
改定率とは
基準年の年金額に対する係数であり、現在の基準は2004年の780,900円
よって2019年度の年金額は、780,900円×0.999≒780,100円となり、2018年度の779,300円に対し+0.1%となる
マクロ経済スライドとは
保険料を負担する現役世代の減少傾向、および平均寿命伸長による年金給付額の増加傾向の中、現役世代の保険料水準に一定の歯止めをかけながら年金制度を維持するため、年金給付額を抑えるように設定された自動調整の仕組み。具体的には「直近3年間の被保険者数増減率×平均寿命伸長勘案率(当面は0.997)」により調整率が算出される
たとえば2019年度に適用するマクロ経済スライド調整率は、被保険者数がむしろ0.1%増えたため、「1.001×0.997」で0.998、すなわち0.2%のマイナスとなった
マクロ経済スライドは引上げを抑制するが、引下げのときに引下げ率を拡大したり、本来なら据え置きや微増のときにマクロ経済スライド調整率の適用でマイナス改定にしたりすることはない。尚、2018年度のように物価がプラス、賃金がマイナスの場合、現行ルールでは年金額据え置きとなり、適用すべきマクロ経済スライド調整率は次のプラス改定時期まで持ち越される。なお2021年度からは新ルールにより、物価変動率に対して賃金上昇率が小さい場合や下落幅が大きい場合、また賃金だけが下落した場合は、賃金の変動率に従って改定率が決定される。一方賃金上昇率のほうが大きい場合など前記に該当しない場合は、原則通り、新規裁定者(当該年度中に65歳から67歳になる者)と既裁定者(当該年度中に68歳以上になる者)で異なる改定率となる(新規裁定者は賃金に、既裁定者は物価に連動)
2019年度年金額を反映した「公的年金の概要」はこちらをご参照 PC向けサイト
なお国民年金保険料は対前年70円増の月額16,410円となる