事故などで被害者となり治療を受けた場合、健康保険は適用せず、治療費は加害者が支払うのが原則である。
しかしこのような被害事故の場合、「第三者行為による傷病届」等を提出することで、とりあえず健康保険を使わせてもらい、健康保険側はその立替分を追って加害者に請求する、というシステムを利用できる
ところがこの立替分を請求していないために、単純な出費のままとなっているケースが特に国保に多く、その金額が年間数十億円になると見て、厚労省が調査に乗り出した
要因として、報道では自治体担当者の知識不足を挙げているが、回収への執着や体制上の問題も懸念される
この回収漏れによる損失も含めて財政計算が為されているとすれば、それが国保保険料に反映されていることになる。すなわち事故の加害者側(通常は自賠責保険および損害保険会社)が支出を免れる一方、国保加入者が負担を被る結果となっていたのだ。調査により実態を明らかにし、速やかに是正されることを期待したい
それはさておきこの機会に前述システムの利用について補足したい。というのは事故の被害者として治療を受けた際、病院がこのシステムについてアドバイスをしてくれるとは限らないからだ
なにしろ同じ治療をしても健康保険を適用しない「自由診療」のほうが、適用する「保険診療」よりも点数単価が高いのだから、適用を歓迎しない病院が現れても不思議ではない。自身がしっかりと認識していないと「事故なので健康保険適用外です」と病院に言われるがまま、自由診療の高額治療費(単価が高いうえに10割負担)を負担させられる羽目になりかねない
いずれは加害者に請求できるとしても、立替額が大きくなれば負担となる。まして、加害者が無保険や何らかの事情で任意保険が適用されない場合などでは、受領する賠償額にダイレクトに影響しかねない
というのは自賠責はケガの場合、限度額が120万円であり、治療費でその枠を使ってしまうと、休業損害・通院費・慰謝料など、他の費目の受給枠が無くなってしまうからだ。加害者に直接請求しても、賠償資力がなければ泣き寝入りとなる