健康保険法改正2021

6月4日に成立した改正健康保険法のポイントは次の通り。

傷病手当の期間通算化

現在、健康保険の傷病手当金は支給開始日から1年6ヵ月を経過すると打ち切られるが、2022年1月1日からは、通算で1年6ヵ月までとなる

すなわち症状が緩和し一旦出勤し始めた後、再び悪化し休業を開始した場合、その勤務期間分だけ上限給付日数が減少していたが、改定により、その期間分だけ期限が延長され、延べで1年6ヵ月まで受給できることとなった

本改定が効果を発揮するのは、休業に中断があり、休業終期が開始から1年6ヵ月を超える場合である

なお改定の対象は「2022年1月1日時点で傷病手当受給中の人」からとなる

「任意継続被保険者」を任意の時期に脱退可能に

現状では2年の期限か、被保険者資格喪失事由が生じない限り脱退不可能だが、改定後は脱退の意向を申し出れば、申し出受理日の翌月1日付で辞められるようになる

保険料比較で国保のほうが有利になったり、子が就職して被扶養者に該当することとなったりした場合など、状況の変化に応じて脱退を選択できるようになる

現在、資格喪失事由としては、「他の健康保険の被保険者になった」「後期高齢者医療制度加入となった」「納付期日までに保険料を納付しなかった」などがあるが、「健康保険の被扶養者になった」「国民健康保険の被保険者になった」等は資格喪失事由に該当せず、途中で脱退しようとする場合、意図的に保険料の支払いを止めるなど、不合理な手段を取らざるを得なかった

なお2022年1月1日より脱退申し出が可能となる

任意継続被保険者の保険料算定基礎は(A)「本人の退職時の標準報酬月額」と(B)「当該保険者の全被保険者の平均標準報酬月額」のうち低い方を採用しているが、改定により、(A)が(B)より高い場合、(A)と(B)の間で各保険者が規約で定めることが可能となった

育児休業中の保険料免除制度改定

現在、免除対象月の判定は、当該月の月末に休業しているか否かでなされている。つまり月末1日休業しただけで対象になる一方、月初から休業していても月末に職場復帰すれば免除を受けられない

改定により、休業期間が同月内に収まる場合、月内に14日以上休業していれば月末に復職していても免除されることとなる

ただし免除対象月が賞与月に該当していた場合、現在は賞与に対する保険料も無条件に免除されているが、改定後、賞与分に対する保険料は、休業期間が1か月超でなければ免除されない(月例給与に対する保険料のみ免除)

  1. 免除期間の原則が「休業開始月から休業終了日の翌日が属する月の前月まで」であることに変わりはない。つまり通常は休業開始月は免除されるが、終了月は免除されない(月末に終了した場合のみ終了月も免除)
  2. 当免除制度は、同じ社会保険料として厚生年金保険料の免除についても同様の運用となる

なお当改定は2022年10月分の判定から適用される

出産育児一時金の金額改定

現在、出産時には(A)産科医療補償制度の掛け金相当額(16,000円)+(B)純粋な出産育児一時金(404,000円)=42万円が給付されているが、(A)が12,000円となるのに合わせ、(B)に4,000円を上乗せし408,000円となる(2022年1月1日以降の出産に適用)

よって産科医療補償制度に加入している医療機関で、補償制度対象の出産をした場合は、合計で従来と同額の42万円のままだが、加入していない医療機関での出産や、補償制度の対象とならない場合(22週未満の出産等)は、408,000円の給付となる

いずれにしても産科医療補償制度の掛け金は、医療機関を通して保険に掛けられるので、実質はそれを除いた出産費用が408,000円より高ければ、その差額を負担することとなり、安ければ差額を受領する(手元に残る)ことになる
なお産科医療補償制度の加入率は99.9%に達している

出産育児一時金の請求・受領方法は3種類

  1. 直接支払制度(医療機関が代理で請求・受領)
  2. 受取代理制度(本人請求で受取のみ医療機関)
  3. 本人請求・本人受取

直接支払と受取代理の場合、不足分を医療機関に支払い、余剰となる場合は差額を受領する(直接支払の場合、別途請求要)