6月29日に成立した働き方改革関連法を「労働者として心に留めておきたい事項」という視点で概要をまとめた。
1.時間外労働の上限規制
現行 | 改正後 |
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労使間で協定を締結し(36協定)労基署に届け出ることで時間外が認められるが、「月45時間・年360時間」の上限設定は大臣告示によるもので法律上は制限なし。且つ、協定に特別条項を付せば、年6ヶ月までは上限なく時間外が認められた | 労基法で月45時間・年360時間までを原則とし、特別条項を定めれば年6ヶ月に限り月上限を超え(その場合でも100時間未満)年間計で720時間まで可とした。ただし2~6ヶ月の連続する複数月の平均が80時間を越えてはならない |
2.割増賃金規制
現行 | 改正後 |
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時間外労働・休日労働に対しては25~50%の割増賃金が支払われなければならない。さらに月60時間超の部分に対しては50%以上でなければならない(中小企業を除く) | 2023年4月より左記「中小企業の除外規定」が削除される |
3.有給休暇の付与義務
現行 | 改正後 |
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労働者から請求があった場合、使用者は定められた日数を限度に付与しなければならない。ただし使用者には「業務都合による時季変更権」も認められている | 使用者は付与日数が10日以上ある労働者(非正規を含む)に対し、年5日以上を時季指定しなければならない(取らせなければならない)。なお時季指定については労働者の希望を尊重するよう努めなければならない |
4.同一労働同一賃金
給与・賞与・その他の待遇、それぞれについて基準を明確にして非正規社員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)に対する不合理差別の禁止を明記し、ガイドラインが策定された
待遇ごとの考慮要素が同じなら同一の待遇(均等待遇)を、相違があればその相違の程度に応じた待遇(均衡待遇)をしなければならない
派遣労働者については、次のいずれかの措置を取らなければならない
- 派遣先労働者との間で均等待遇・均衡待遇を確保する
- 派遣元企業と労働組合等との間で労使協定を締結し、従事する業務の平均賃金等を基準に待遇を決定する旨を定めておく
企業は労働者から待遇差の内容・理由について説明を求められた場合、これに応じなければならず、また説明を求めた労働者に対し不利益な取扱をしてはならない
5.企業の労働時間把握義務
労働安全衛生法改正により、企業は労働者(管理監督者・裁量労働制適用者を含む)の労働時間をタイムカード、パソコン使用時間等の客観的方法で把握・記録し3年間保存しなければならないことが明記された
真にやむを得ず自己申告制を採る場合でも厳正な管理が求められている
6.フレックスタイムの清算期間延長
清算期間が1ヶ月から3ヶ月へと延長されることで、より長期間での総労働時間調整が可能となる
(例)7・9月に多く働き、8月を短時間にする
7.高度プロフェッショナル制度新設
特定の高度専門業務に就く者に労基法を適用せず(労働時間規制に縛られず)、成果により評価・待遇する制度が新設された(時間外・休日・深夜の労働にも別途の賃金は一切支払われない)
ポイント
- 対象者の年収:当面1075万円以上(省令で定める)
- 年間104日以上、4週間に4日以上の休日を付与しなければならない
- 労使委員会(労働者代表の構成割合50%以上)の5分の4以上の決議で種々条件を決定の上、労基署に届出る
- 対象労働者の同意が必要
想定される業務
- 金融商品の開発業務
- ディーリング業務
- アナリスト業務
- コンサルタント業務
- 研究開発業務(医薬品等)
懸念される問題
- 長時間労働の抑制に逆行する可能性
- 評価の妥当性確保が困難なケースもあり
各項目の施行日
項目NO | 大企業 | 中小企業 |
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1 | 2019年4月 | 2020年4月 |
2 | 施行済み | 2023年4月 |
4 | 2020年4月 | 2020年4月 (パートタイム・有期労働者は2021年4月) |
3/5/6/7 | 2019年4月 |