年金額は物価と賃金の動向により毎年度改定される。では2017年度はどうなるだろうか。改定の指標は物価(前年度)がマイナス0.1%、賃金がマイナス1.1%と、ともに下落した。このため2017年度の年金額は物価下落率に合わせ0.1%の引下げと決まった
というのも現在の年金額改定システムでは、物価、賃金とも下落し、賃金の下落率が物価の下落率を上回る場合、物価の下落率に合わせて年金額を引下げることと決まっているからだ
つまり賃金(=現役生活者)の下落はさておき、年金受給者の生活水準を維持するため、物価下落率以上に引下げることはしていない
しかし先月14日に成立した年金改革法が仮に今回のケースに適用されるならば、賃金下落率に合わせた1.1%の引下げとなる。すなわち2021年度からは、現役組とともに生活水準低下を受け入れざるを得なくなる
具体的には0.1%の引下げにより、2017年度の年金額は満額受給で779,300円となる(2016年度は780,100円)。4月分からの適用だが、6分割の後払いのため、実際の減額は6月給付分からとなる
なお年金給付を抑制する制度である「マクロ経済スライド」は年金額引下げ時には適用しないので、今回も出番はなかった。しかし実はこの「マクロ経済スライド」の運用についてもこのたび改定された
現行では「年金額引下げ時には適用しない」というだけで、翌年度はまた白紙からのスタートで、適用するか否か、いくら適用するかを判定している。それに対し2018年度からは適用しなかった分が「借り」として残り、次年度以降、適用できることとなった年度へ持ち越して適用されることとなった(年金額引下げ時に適用しないことは今までどおり)
2017年度適用が予定されていたマクロ経済スライドの調整率は0.5%で、もし年金額が引上げならば、その引上げ率より差し引かれるはずであった。仮に今のような経済状態が続くならば「借り」だけがどんどん蓄積し、いつの日か景気が好転しても年金額アップとはいかない可能性が大きい
マクロ経済スライド調整率:下記勘案の上決定
- 平均余命の伸び:▲0.3%
- 相対的収入保険料の減少
- 保険料を負担する現役人口の減少
(2年前を基準に過去3年間の平均) - 1人当たりの賃金の伸び
- 保険料を負担する現役人口の減少