現在はパート勤務者のうち勤務時間または勤務日数が正社員の4分の3以上の場合に健康保険・厚生年金の対象となっている。それが、この10月からは4分の3未満でも一定条件のもとに適用されることとなる。
対象となるのは下記要件すべてを充たす特定適用事業所勤務者である
特定適用事業所とは
改定により新たに被保険者となる者を含まずに、被保険者が常時500人を超える健保・厚生年金適用事業所のことである
- 所定労働時間が週20時間以上
月・年単位の場合、年間52週で算定 - 月額賃金が8.8万円以上
各種手当・賞与を除く月額換算 - 1年以上勤続見込み
更新制によるものを含む - 学生でない
ただし下記の者は例外として可- 卒業前に就職先に勤務する者
- 夜間・定時制・休学中の者
関連する改定として、厚生年金の標準報酬月額の下限が、現在の9.8万円から8.8万円に引き下げられる(等級区分が1つ増え31等級となる)
ところで健保や厚生年金の対象となることは、働く者にとって歓迎すべきことなのだろうか
新たに対象となる人は、現在、国民年金の第1号被保険者または第3号被保険者、そして、健康保険は国保または親族の被扶養者となっているはずだ
国民年金第1号被保険者の場合、月々の保険料は16,260円(平成28年度)だが、厚生年金なら標準報酬月額が9.8万円の場合で8,736円と大幅に負担減となる上、障害厚生年金・遺族厚生年金も付随して保障されることとなる。ちなみに国民年金の保険料を上回るのは標準報酬月額が18万円以上の場合だ
さらに健康保険が国保から移行する場合のメリデメを検証してみよう。新たに加入する制度や居住地・年齢・世帯構成・収入により異なってくるが、仙台市内で国保から協会けんぽへ移行する場合を想定すると、1人世帯を除いて、世帯としての負担減はあまり期待できない。しかし国保にはない傷病手当・出産手当の制度が健康保険にはある
一方年金が第3号被保険者であり、健保が親族の被扶養者であった人は、今までなかった負担が新たに発生することになる。ただし単純に掛け金負担のみで判断してはならない。厚生年金に加入するということは、自らの老齢年金が積み増しされるだけでなく、障害年金・遺族年金についても加入時から追加担保されることになる
さらに健康保険の被保険者本人になることで傷病手当や出産手当も追加保障される
すなわち現在が国民年金第1号被保険者・国保加入の場合はメリットが大きいと言えるが、第3号被保険者・親族の被扶養者の場合は、「保険料の負担増」と「年金増額・保障追加」の両面を加味して評価する必要がある
ところでこのたびの短時間労働者への対象拡大で、新たに25万人が社会保険被保険者になると見込まれているが、一方で、本来加入すべきなのに加入していない事業者が79万に上ることで、推計200万人が未加入となっている問題は解消に向っているのだろうか