高層分譲マンション(以下、タワマンの略称で記載)の相続税評価額が市場価格を大きく下回ることを利用した「過度な相続税の節税」に歯止めをかけるべく、区分所有建物の評価方法が改定された
現状(見直しの背景)
一般に不動産の相続税評価額は、建物が固定資産税評価額、土地は路線価を基としているが、タワマンの場合、一定の土地を多くの戸数で分けて権利を保有することとなるため土地の評価額が小さなものとなる上、立地の利便性、リッチで安全性の高い構造、眺望の良さなどにより人気が高く、市場価格が高額となっているため、相続税評価額と市場価格が大きく乖離している
特に、高額な高層階ほど乖離が大きく、相続税評価額が市場価格の3割にも満たないケースが発生している。一般的な戸建ての場合、相続税評価額は市場価格の6割程度を目安としているため、均衡がとれず、問題視されていた
新評価法の要点
適用対象
3階建て以上の区分所有建物
(居住用部分の評価のみに適用)
空室でも居住用であれば対象
適用開始時期
評価起点2024年1月1日より
評価額計算の仕組み
評価算式は国税庁のサイトをご参照
算式の意味
- 評価水準(相続税評価額の対市場価格比率)が低いものの評価額を引上げる
- 評価水準=1÷評価乖離率
- 評価水準はその逆数である評価乖離率が大きいほど低下する
- 評価乖離率は
築年数が浅いほど
総階数が高いほど
所在階が高いほど
敷地持ち分面積が狭いほど
(専有床面積計に比し敷地が狭小)
大きくなる
⇒ すなわち、低評価水準となるため、現在よりも評価額が引き上げられる
改定による影響(まとめ)
新評価法を適用することによって、相続税評価額が市場価格の6割未満となっているものは6割程度になるように補正され、6割を超え、市場価格と同程度のものまでは補正せず、市場価格を超えるものは超過せぬよう減額されることとなる
相続対策における不動産の考え方
評価法改定によりタワマンも戸建て同様の評価水準となるが、100%評価の預貯金と比べれば、なお、相続税評価額という視点で(不動産が)有利であることに変わりはない
さらに賃貸に出せば建物は「貸家」、敷地権は「貸家建付地」となり、評価額が下がるし、小規模宅地等の評価減特例を利用できるなら、また、評価額圧縮の効果が期待できる
しかし不動産は複数の相続人での遺産分割を考慮した場合、不公平を生じたり、共有となることで後の処分を難しくしたりする可能性がある。また賃貸すれば、期間を経過するほど資産が増える結果となるため、これらの点を踏まえて検討すべきである