低所得者を対象として2020年度にスタートした題記制度について、2024年度は多子世帯と私立理工農系学生に限り、所得要件を緩和することとなった。
現行制度
一定の低所得世帯における高校卒業後の就学(短大・専門学校及び高等専門学校の4・5年生への進級を含む)を支援するため、入学金及び授業料を減免するとともに、給付型の奨学金を支給する
減免上限額は学校種別と国公立か私立かにより、給付額はさらに自宅通か否かでも異なる。詳細金額は国交省のサイトで確認いただきたいが、国立大学の減免上限額は授業料・入学金とも国立大学の標準額となっているので、満額対象者は概ね全額免除となる
なお減免および給付とも満額は所得区分Ⅰの場合であり、所得区分Ⅱでは満額の3分の2、所得区分Ⅲでは3分の1となる
所得区分は次式の計算結果で判定される
住民税所得割の課税標準額×6%-(調整控除額+税額調整額)
政令指定都市の場合は(調整控除額+税額調整額)に4分の3を乗ずる
所得区分 | 上式算出結果 | 公表年収目安 | 給付・減免割合 |
---|---|---|---|
Ⅰ | 100円未満 | 270万円 | 100% |
Ⅱ | 25,600円未満 | 300万円 | 3分の2 |
Ⅲ | 51,300円未満 | 380万円 | 3分の1 |
「公表年収目安」は二人親(一方は無収入)で、子が本人と中学生の計2人のケースを想定している(様々な家族構成パターンごとの年収目安が文科省サイトに掲載されている)
課税標準額とは
種々控除後の、税率を掛ける最終段階の所得額
調整控除額とは
所得税から住民税への税源移譲に伴う負担増を解消する趣旨で、住民税所得割から減ずる次の金額
住民税課税標準額200万円以下の場合
AとBのうち少ない額の5%
A:所得税と住民税の人的控除額の差の合計
B:住民税課税標準額
住民税課税標準額200万円超の場合
下記算出結果の5%
所得税と住民税の人的控除額の差の合計-(住民税課税標準額-200万円)
税額調整額とは
住民税所得割の非課税所得基準を若干上回る者の税引き後所得が、非課税基準を充足した者の所得を下回ることを回避するため、住民税所得割から減ずる次の金額
(扶養親族がいる場合の算式)
35万円×(本人・扶養親族・控除対象配偶者の合計人数)+42万円-(総所得金額等-算出税額)
なお減免・給付の要件として、上記世帯所得以外に世帯資産額、本人学業成績、学習意欲も選考要素となっている。また想定している、または在学している学校が、当制度の対象となることも文科省のサイトで確認されたい
文科省サイト
< 世帯資産額 >
片親の場合 :1,250万円未満
二人親の場合 :2,000万円未満
不動産は含まない
< 学業成績 >
高校3年時の申請(予約採用)の場合は高校2年までの、入学時の申請であれば高校在学中を通しての「評定平均値が3.5以上」、または「入試成績が上位2分の1以上」
以降の在学中申請であれば「平均成績が上位2分の1以上」、または「修得単位数が標準単位数以上」等の目安があるが、むしろ学習意欲を重視する旨の記述もある
いずれにしても学校を通じての申請となるので学校に照会したほうが良いと思われる(在学中の申請受付は春と秋の年2回)
改定内容(2024年度)
多子世帯(対象学生を含め、扶養する子が3人以上の世帯)と私立の理工農系に入学する世帯について、世帯収入要件を緩和し、現行の所得区分「Ⅲ」を超えても下記以下の場合は対象とする(在校生も対象)
追加される所得区分「Ⅳ」
上記算式結果 | 公表年収目安 |
---|---|
154,500円未満 | 600万円 |
支援内容
多子世帯 | 減免・給付とも満額の4分の1 |
---|---|
私立理工農系 | 私立文系の平均値(入学金・授業料)との差額を減免 (現時点で具体的な金額の明示なし) |
両方に該当する場合は原則「多子世帯」を優先する