3月28日に成立した税制改正法のうち、一般の個人生活者に係る主な項目について内容をまとめた。
NISAの改定
現行「一般NISA」の投資可能期限2023年末を見据えて、2020年度税制改正で2階建ての新たなNISA制度が発表されていたが、それを取消し、より拡充したNISA制度が2024年よりスタートすることとなった。
(ご参照サイト内別投稿)
2023年末時点で現行制度口座内に保有している金融商品は、現行制度期限である「一般NISA:5年」「積立NISA:20年」「ジュニアNISA:5年または18歳になるまで」の間は、そのまま当該口座内で非課税にて保有できるが、2024年からの投資は、新たなNISA制度の口座をゼロから利用することとなる(ジュニアNISAは廃止され、2024年以降は18歳未満でも払出し可能となる)。なお旧制度口座から新制度口座への資産移行はできず、非課税期間が終了したものから順次、課税口座に移管される
非課税期間が終了し、課税口座に移管された場合、その移管時の時価が取得価額とされるため、買付け時よりの値下がりしていても、移管時から値上がりしていれば譲渡益発生とみなされ課税される
積立投資枠 (現積立NISA) |
成長投資枠 (現一般NISA) |
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現行制度 | 新制度 | 現行制度 | 新制度 | |
保有期限 | 20年 | 無期限 | 5年 | 無期限 |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 120万円 | 240万円 |
売却時枠復活 | なし | あり | なし | あり |
- 恒久制度となり、いつでも口座開設でき、毎年、上記枠内で投資できるが、累計での非課税保有限度額が1800万円、そのうち成長投資枠は1200万円と定められている(限度額管理は時価ではなく、買付け額で行う)
- 現行では積立NISAと一般NISA、どちらかの選択制となっているが、新制度では併用が可能であるが(年間最大360万円の投資が可能)、積立投資枠のみ、または成長投資枠のみの利用も可(成長投資枠のみ利用の場合は累計1200万円が上限)
- 投資対象商品は成長投資枠において、現行一般NISAよりも絞られ、高レバレッジ型、毎月分配型等、長期投資不適とみなされた商品が外された
- NISA口座内での譲渡損益が、他の口座内のそれと損益通算できないのは従来通り
- ジュニアNISAは2023年末で終了。終了時点の保有資産は、5年の非課税期間満了、または18歳になるまでは非課税での保有が可能
- 現行NISA口座を開設済みの場合、同金融機関で自動的に新制度NISA口座が開設される予定
相続に係る「贈与税制」の改正
暦年贈与
相続発生時には、それ以前3年以内に被相続人が「相続人」に贈与した財産は、相続財産に加算されて相続税の対象になっているが、その範囲が「7年以内の贈与」へと拡大される
2024年1月以降の贈与から、3年超でも加算対象になるため、本改正が影響を受けるのは2027年以降の相続であり、実際に7年分加算されるのは2031年以降の相続となる
なお緩和措置として、3年超7年以内の贈与財産合計額から100万円を控除できることとされた
特別受益とは
被相続人から特定の「相続人」に対してなされた遺贈、婚姻に係る贈与(支度金・持参金)、生計の資本として贈与(居住用不動産、またはその取得資金、開業資金、まとまった生活資金等)を指す。当該額を加えて遺産分割した上で、当該特定相続人の分割分から当該額を差し引くことで公平性を保つ
特別受益10年持戻しの規定とは
配偶者及び子には、遺言による指定に係わらず、一定の相続分(遺留分)を保全する仕組みがあるが、その算出の基となる金額には遺産額のほか、相続開始前1年以内のすべての贈与を加えることとされているが、その贈与が特別受益に該当する場合は10年前からのものをすべて加算(持戻す)とされている
相続時精算課税
暦年贈与と同様、年間110万円の非課税枠を設定することとなった(110万円以内の贈与は申告不要)
すなわち年間で110万円を超える金額についても、累計2500万円に達するまでは贈与時点では非課税。それを超えた贈与額に対し20%の税率で課税される。相続発生時には110万円の控除額を除いた贈与額(2500万円までの分は含む)を相続財産に加えて相続税を算出し、支払い済みの贈与税額を控除する
現行では、相続時精算課税を選択した場合、「年限なく、且つ控除額なしで贈与財産が相続財産に加算されて相続税が算出される」という暦年贈与に対する不利な面があった。改定により各々のメリデメは次のようになる
メリット | デメリット | |
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暦年贈与 | 贈与から7年経過すれば持戻されない | 7年以内の贈与は控除額分も含めて持戻される |
相続時精算課税 | 110万円以内なら直近の贈与でも持戻されない | 年間110万円を超えた分は年限なく持戻される |
相続時精算課税を一旦選択したら、その後の贈与はすべて相続時精算課税を適用せねばならず、暦年課税に変更する、あるいは戻ることはできないが、その選択は贈与者ごとに決めるものであり、受贈者側から見れば、ある贈与者(たとえば父)からの贈与は暦年課税適用の贈与で、異なる贈与者(たとえば母)からの贈与は相続時精算課税を選択することは差し支えない。よって暦年贈与の控除額と相続時精算課税の控除額を併用することは可能である
一括贈与非課税特例制度の見直しと延長
教育資金の一括贈与
- 適用期限を3年延長し、2026年3月末までとする
- 受贈者が30歳に達する等により契約が終了した場合、未利用の残額は贈与税課税対象となるが、その場合の税率が例外なく一般税率となる(現行では、受贈者が贈与者の18歳以上の直系卑属の場合は特例税率適用)
- 贈与者死亡時の使い残し残高については、相続発生時に受贈者が23歳未満の場合や在学中の場合、相続財産に加算されないこととなっているが、贈与者の相続税課税価格が5億円を超える場合は加算されることとなった
結婚・子育て資金の一括贈与
- 適用期限を2年延長し、2025年3月末までとする
- 受贈者が50歳に達する等により契約が終了した場合、未利用の残額は贈与税課税対象となるが、その場合の税率が例外なく一般税率となる(現行では、受贈者が贈与者の18歳以上の直系卑属の場合は特例税率適用)
相続空き家譲渡特別控除制度の見直しと延長
- 適用期限を4年延長し、2027年12月末までとする
- 現行では、譲渡前に耐震改修や建物取壊しを要していたが、2024年1月以降の譲渡については、翌年2月15日までに基準を充たせば可となる。また、買主が実施しても可となった
- 被相続人の居住用家屋を取得した相続人が3人以上の場合、各人の控除額が2000万円となる(現行では規定がないため各人3000万円)
本制度適用の主な要件
- 相続発生から3年を経過する年の年末までに、被相続人の居住用家屋またはその敷地を譲渡すること
- 敷地は家屋とともに、または家屋取壊し後に譲渡すること
- 家屋は昭和56年5月31日以前に建てられ、且つ、譲渡時に耐震基準を充たしていること
- 譲渡価格が1億円以下であること
- 相続発生から譲渡時まで、何にも使用していないこと
- 相続発生直前に被相続人以外が居住していなかったこと
自動車関連税制の見直しと延長
エコカー減税(重量税の優遇措置)
- 制度を3年延長し、2026年4月末までとする
- 本年4月末期限の現行基準は、本年12月末まで変更せず継続
- 2024年1月以降は基準をより厳しく見直し、対象車を絞り込む(ガソリン車・ハイブリッド車の適用下限が、現行では30年度燃費基準の60%だが、2024年1月からは70%、2025年5月からは80%に引上げる)
環境性能割(旧自動車取得税)
- 燃費等による段階的優遇税率を3年延長し、2026年3月末までとする
- 本年3月末期限の現行税率区分は本年末まで継続
- 2024年1月以降は、段階的に基準をより厳しく見直し、優遇対象車を絞り込む