所有者が死亡しても登記の変更(相続登記)をしていないために、その後の課税や相続、公共事業に支障を来たすことが以前より問題視されていたが、東日本大震災後の宅地造成時に用地買収のネックとなり復興が進まなかったことで、改めて喫緊の課題と認識され、この度ようやく法改正された
というのもこれまで登記変更を義務付ける法律がなく、ほとんどフォローもされてこなかったことにより、登記上、いつまでも故人の所有となったまま、且つ、それが子々孫々に渡り放置されたため、所有権者(相続権者)が膨大な人数となり、実態として「所有者不明」となっているケースが多々見られるというのが現状だったのだ。所有者不明の土地は九州の面積を上回るとの推計もある
しかしてこの21日に民法、不動産登記法等の関連改正法が成立し、相続による取得を知った時から3年以内の所有権移転登記を義務付けるとともに、名義人の住所・氏名等の変更についても2年以内の変更登記を義務付けた(施行日は公布後2~3年以内の日を政令により定めるとのこと)
(2021年12月追加情報)
本制度は2024年4月1日施行と決定
義務化の対象には、施行日以前に相続で取得した不動産(土地・建物)も含まれるが、その場合の登記期限は「相続の開始を知り、かつ所有権を取得した日から3年を経過した日」と「2027年3月31日」のいずれか遅い方となる
*売買や贈与によって取得した人や、相続人以外の受遺者に登記義務はない
なお義務違反に対しては、相続登記が10万円以下、住所・氏名等変更登記については5万円以下の過料が課せられる
負担軽減制度
(A)3年以内に分割協議が調わない場合や、(B)長年放置された登記の変更については、事務負担が大きくなるため、負担軽減のための「相続人申告登記制度」が設けられた。すなわち相続人は「登記名義人に相続が発生したこと、そして自らが登記名義人の相続人であること」を登記官に申し出れば(登記申請)義務を果たしたものとみなされ、過料を免れる。この申し出では、相続人の範囲を確定する必要がないため、申出人が登記名義人の相続人(の1人)であることを示す戸籍謄本があればよい。なお(A)においては、当然ながら、協議成立後3年以内に正式に登記申請しなければならない
上記(A)の場合、法定相続分通りの共有とする形で、とりあえず登記しておく方法があるが、その事務負担が軽減される
その他
また新たに以下の制度も創設された
- 相続または遺贈(相続人への遺贈に限定)により取得した土地は、下記要件を充たし、10年分の管理費用(負担金)を納めることで所有権を放棄する(国庫に帰属させる)ことも可能とした(2023年4月27日施行)
- 更地である
- 担保に入っていない
- 土壌汚染がない
- 境界が明確(境界をめぐる争いがない)
- 他の者の使用(予定)がない
- その他、管理・処分に過分な費用・労力を要する状況にない
- 相続人以外の者が遺贈により取得した場合や、贈与・売買・死因贈与により取得した者は申請できない
- 上記、負担金は最低でも20万円を要するほか、審査手数料として土地一筆当り14,000円の負担も発生するため、まずは市場で譲渡できないか探ってみた方が良いかもしれない(無償譲渡マッチングサイトもあり)
- 遺産分割されずに放置され、相続開始後10年を経過した場合、法定相続割合にて分割したものとみなす
相続時に、親の不動産がどこにあるのかを調べることができる「所有不動産記録証明制度」が、2026年4月までに施行される予定