2020年度の年金額は0.2%のプラス改定と決まったが、昨年度に引続きマクロ経済スライド調整率が適用され、実質的価値は減少し続けている。
年金額改定の指標である物価変動率と名目手取り賃金変動率の2020年度適用数値は次の通り
物価変動率 | 0.5% |
名目手取り賃金変動率 | 0.3% |
本来、新規裁定者(67歳到達年度まで)は名目手取り賃金変動率、既裁定者(68歳到達年度以降)は物価変動率によって改定されるが、両指標ともプラスで物価変動率より名目手取り賃金変動率が低率の場合は、新規裁定者、既裁定者とも名目手取り賃金変動率で改定されるルールとなっている。よって0.3%が適用されることになるが、これにさらにマクロ経済スライド調整率(このたびは▲0.1%)が適用され、結果として0.2%のアップとなった
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なぜ、67歳到達年度までが新規裁定者となるのか
名目手取り賃金変動率は「物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率」で計算されるが、このうち、実質賃金変動率は4年度前から前々年度までの3年度平均が用いられる。よって65歳到達前(年金受給前)の賃金状況が反映される67歳到達年度までを新規裁定者とした
2020年度の国民年金額(480ヵ月保険料を納めた場合の満額)は次の通り計算される
0.999 | × | 1.003 | × | 0.999 | = | 1.001 |
(前年度改定率) | (名目手取り賃金変動率) | (マクロ経済スライド調整率) | (2020年度改定率) |
*前年度比で改定率が0.002ポイントアップ
780,900円×1.001≒781,700円(100円未満四捨五入)
780,900円は基準額(平成16年度の本来水準額であり、ここを改定率「1」として毎年、前年の改定率に新採用指標を乗じて新改定率を算出し、それを当基準額に乗じて新年金額を決定する)
結果、年金額としても概ね0.2%アップとなった
781,700円÷780,100円(前年度年金額)≒1.002
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実際には偶数月に2ヶ月分(前月分と前々月分)ずつ給付され、その金額算式は次の通り
各人の裁定年金額=781,700円×各人の加入月数/480ヶ月(1円未満四捨五入)
各人の裁定年金額÷6(1円未満切捨て)が6月以降給付され、切捨てによって生じた不足分は翌年2月の給付時に上乗せされる(なお、特別徴収されるべき介護保険料や所得税がある場合は、算出された給付額から天引きされての支給となる)
なお2020年度の国民年金保険料は、対前年度130円増の16,540円となる
国民年金保険料の算出方法
基準額(2019年度以降は17,000円)×改定率
改定率=前年度改定率×名目賃金変動率
名目賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率
0.965 | × | 1.01 | × | 0.998 | = | 0.973 |
(前年度改定率) | (物価変動率) | (実質賃金変動率) |
17,000円×0.973≒16,540円
年金額算出で用いた「名目手取り賃金変動率」は「手取り」を基準とするため可処分所得割合変化率を乗じていることも1要因ではあるが、保険料算出の際に用いた「名目賃金変動率」とは物価変動率や実質賃金変動率の計算対象年も異なるため両者は一致しない(「名目手取り賃金変動率」が前年の物価変動率を採用しているのに対し、「名目賃金変動率」は前々年の数値を採用している等)