団塊の世代と言われる年代の全員が75歳以上となる2025年を控え、益々の医療費増加が見込まれることを背景に、一定以上の収入がある後期高齢者に負担増を求める健康保険法改正案が12日に成立した。
保険料は都道府県(後期高齢者医療広域連合)ごとに計算されるので、住所地によって異なるが、宮城県における2022~2023年度の算式は下記の通りとなっている(2年ごとに見直される)
1人当たり年間保険料=均等割額+所得割額(100円未満切捨て)
均等割額: | 44,640円 |
所得割額: | (前年総所得金額ー基礎控除43万円)×8.62% |
すなわち前年収入が公的年金のみの場合、公的年金等控除110万円(年金収入が330万円未満の場合)と基礎控除43万円を合わせた153万円までの収入なら所得割の負担はない
この153万円を超える人の所得割額が引上げの対象となるが、経過措置として2024年度については211万円超の人のみが対象となる。なお具体的な引上げ幅は未だ公表されていない
< 保険料軽減制度 >
(1)低所得者を対象
軽減割合 | 被保険者全員及び世帯主の所得計が下記以下 |
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7割 | 43万円+10万円×(年金/給与所得者数ー1) |
5割 | 43万円+29万円×被保険者数+10万円×(年金/給与所得者数ー1) |
2割 | 43万円+53.5万円×被保険者数+10万円×(年金/給与所得者数ー1) |
- 65歳以上の公的年金受給者の所得は、公的年金等控除後、さらに15万円を控除して計算
- 「年金/給与所得者」とは給与所得55万円超、または公的年金収入が60歳未満で60万円、65歳以上で125万円超の人を指す
7割軽減 | 13,392円 |
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5割軽減 | 22,320円 |
2割軽減 | 35,712円 |
(2)被扶養者からの移行者を対象
親族勤務先の健康保険で被扶養者となっていて、75歳に達したことで後期高齢者医療の被保険者となった人については、均等割が2年間5割軽減され、所得割は課されない
低所得による軽減制度と重複する場合は、より高い軽減割合を適用する
年間保険料の上限も、現行の66万円から2024年度は73万円に、2025年度からは80万円に引上げられる
後期高齢者医療の医療費は約5割が公費、約4割が現役世代からの支援、残る約1割を後期高齢被保険者の保険料で賄われており、この度の引上げは現役世代のさらなる負担増を抑制する趣旨のものだが、高齢者には無縁の「出産育児一時金」引上げの原資も含まれるという(従来42万円だったものが本年4月より50万円に引上げられた)
その他の改正点
- 出産育児一時金を現行42万円から50万円へ引き上げる(4月からの遡及施行)
≫ 出産育児一時金について(ご参考:サイト内別投稿) - 国民健康保険においても産前産後の計4か月は保険料を免除する
- 前期高齢者の医療費財源における保険者負担(現役世代からの支援)の仕組みにおいて、給与水準要素の比重を上げる。これにより、比較的給与水準の高い大企業の健保組合の拠出が増え、中小企業が多い協会けんぽの負担が減ることが想定される