2022年度税制改正の概要

3月22日に成立した2022年度改正税制の個人分野での主なポイントをまとめた。

住宅ローン控除の見直し
  • 適用期限を2025年まで4年延長
  • 控除率を現行の1%から0.7%に引下げ(すでに控除を受けている人は1%のまま)
  • 所得要件を現行の「3000万円以下」から「2000万円以下」に引下げ
  • 所得1000万円以下を要件に、対象物件の床面積下限を40㎡に引下げ(現行50㎡)
  • 対象中古住宅の要件から「築年数が非耐火20年以下、耐火25年以下」を削除し「新耐震基準に適合する家屋」とした。なお1982年1月1日以降に建築された家屋は適合しているものとみなす(本見直しは同趣旨の築年を規定した法制すべてに適用される)
  • 控除対象借入残高(限度額)の改定
改正前 改正後
2021年に入居 2022年または
2023年に入居
2024年または
2025年に入居
上段: 限度額
下段:控除期間
上段: 限度額
下段:控除期間
上段: 限度額
下段:控除期間
新築 一般住宅 4000万円
13年
3000万円
13年
控除なし
特例下記
省エネ基準適合住宅 4000万円
13年
3000万円
13年
ZEH水準省エネ住宅 4500万円
13年
3500万円
13年
認定住宅 5000万円
10年
5000万円
13年
4500万円
13年
中古・改修 一般住宅 2000万円
10年
2000万円
10年
省エネ基準適合住宅等 3000万円
10年

登記上の建築日が2024年6月30日以前なら、2000万円限度に10年間控除可

ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅とは

「(Net)Zero Energy House」の頭文字をとったネーミング。高い断熱性、省エネ性能に優れた設備、太陽光発電等により、エネルギー消費量を差引きで概ねゼロにできる性能基準を満たした住宅

東日本大震災・被災者の特例も限度額・控除率・要件・控除年限を改定の上、4年延長された(2025年末入居分まで)。なお現行は「5000万円を限度に年末残高の1.2%を10年間控除」

控除率はすべて0.9%、所得要件・物件要件・控除年限は上記「一般」に同じ

< 限度額 >
2022年または
2023年に入居
2024年または
2025年に入居
新築 5000万円 4500万円
中古 3000万円

2025年居住分は対象地域が警戒区域等に限定される

特定改修工事の税額控除制度を統合・延長

ローン型減税を投資型減税に整理統合の上、投資型タイプで2年延長(2023年末まで)

ローン型減税 借入期間5年以上のローンを利用した特定改修工事及び同時に行うその他の工事について、各々ローン残高に一定率を掛けた額を5年にわたり所得税から控除できる
投資型減税 ローン利用の有無に関係なく、特定改修工事の標準費用の10%を1年限りで所得税から控除できる

< 改定内容 >
現行の投資型減税における(A)「特定改修工事の標準費用」の10%控除に加え、(B)「標準費用を超えた実費及び同時に行うその他の工事費用」の5%も控除可とした。ただし(B)は(A)の金額を限度とし、かつ、合計で1000万円を上限とした

特定(必須)工事 限度額
耐震 250万円
バリアフリー 200万円
省エネ 250万円
(350万円)
多世帯同居 250万円
耐震or省エネ
+耐久性向上
250万円
(350万円)
耐震+省エネ
+耐久性向上
500万円
(600万円)

( )内の数値は太陽光発電を設置する場合

省エネリフォームのうちの1工事「全居室の全窓の断熱改修工事」は「全」が削除され、「窓の断熱改修工事」と緩和された

住宅取得等資金贈与の特例を改正・延長
  • 2023年末まで2年延長
  • 非課税限度額は次の通り
    (2022年1月1日以降の贈与)
住宅種類 現行 改正後
耐震・省エネ・
バリアフリー住宅
1500万円 1000万円
その他住宅 1000万円 500万円

「現行」は消費税10%適用の場合

その他住宅関連
  • 認定住宅新築時の特別控除を「ZEH水準省エネ住宅」を対象に加えた上で、2年延長(2023年末までの居住に適用)
  • 居住用財産の買替特例を2023年末まで2年延長
  • 居住用財産・譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を2023年末まで2年延長
  • 住宅に関する登録免許税・不動産取得税・印紙税の軽減措置を2024年3月末まで2年延長
  • 「居住用財産の買替特例」とは所有期間10年超の居宅を買い替えた場合の譲渡所得を将来に繰り延べられる特例
  • 「居住用財産・譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」とは居宅の譲渡損失を他の所得と損益通算でき、なお残る損失は3年間繰越控除できる特例
短期での退職所得課税を改正

役員でなくても勤続5年以下の場合、退職所得控除後の残額のうち、300万円を超える部分には2分の1を乗じないこととした(2022年1月1日以降)

上場株式等の配当・譲渡所得の課税方式選択について改定

配当の課税方式には総合課税・申告分離課税・申告不要制度の3方法があり、各人は適用される税率や社会保険料等を考慮し、所得税と住民税、それぞれに有利な方式を選択できたが、2023年分の所得税、2024年分の住民税からは所得税と住民税の課税方式を一致させなければならないこととなった。なお上場株式等の譲渡所得も申告分離課税か申告不要制度かを、所得税と住民税に共通して選択しなければならないこととなった