2021年度税制改正の概要

3月26日に成立した税制改正関連法の中で、家計に関わる主なものをまとめた。

1.住宅ローン減税の改定及び特例措置の延長
  • 対象住宅の床面積要件を緩和
    現行「50㎡以上」を「40㎡以上」へ
    ただし本規定を適用できるのは、合計所得金額が1,000万円以下の場合に限る
  • 特例措置の延長
    消費増税への対応としてスタートした「13年間適用」の特例措置は、本来「2020年12月末まで入居」が要件だったが、「2022年12月末まで入居すれば可」とした。ただし注文住宅は2021年9月末まで、分譲住宅は2021年11月末までに契約しなければならない

近年の超低金利により、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)の1%を借入金利が下回り「金利負担よりも所得税の減額分のほうが大きくなる」という現象が発生していることについて、政府は「今後の税制改正で当該逆転現象を回避する措置を検討する」としている

2.エコカー減税等の見直し(詳細省略)
  • 自動車重量税のエコカー減税適用を2年間延長し、対象を「2023年4月末までの新規登録車」とするとともに、免税の回数や割合を、現行よりも厳しい2030年度燃費基準をもとに設定した
  • 自動車税・軽自動車税の環境性能割(旧・自動車取得税)についても、2030年度燃費基準を適用し、税率を1%軽減する臨時的軽減措置を9か月延長し「2021年12月末まで」とした
  • 自動車税・軽自動車税の種別割(旧・自動車税)におけるグリーン化特例を2年間延長し「2023年3月末新規登録分まで」とし、自家用車については、対象を電気自動車・燃料電池車・天然ガス自動車・プラグインハイブリッド車のみとした
3.子育てに係る助成金が非課税に

国や自治体による「保育や子育てに係る様々な助成」について、現行では雑所得として課税対象となっているが、支援効果が十分発揮されるよう非課税とした

4.「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」の延長と見直し
  • 2年間延長し「2023年3月末まで」となった
  • 贈与者死亡時に、贈与された財産に使い残しがある場合、死亡前3年以内の贈与についてのみ、その残額が相続財産に持ち戻されていたが、「3年以内」の制限がなくなり、その時点の残額すべてが持ち戻されることとなった(受贈者がその時点で23歳未満や在学中の場合を除く)
  • 代襲相続人でない孫への一括贈与に使い残しがある場合、相続財産に持ち戻される当該額は、「相続税2割加算」の対象外であったが、2021年4月から通常通り2割加算が適用されることとなった
5.「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」の延長と見直し
  • 2年間延長し「2023年3月末まで」となった
  • 受贈者の年齢条件が、現行の「20歳以上」から「18歳以上」となる(民法改正を受けて)
  • 上記 4 同様、代襲相続人でない孫への一括贈与について、2021年4月から「2割加算」が適用されることとなった
    (当制度では従来、使い残しは制限なく相続財産に持ち戻されている)
6.「住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置」の制限額維持と改定
  • 「2021年4月~2021年12月」は2020年度よりも贈与上限額が引下げられる予定だったが、引下げを行わず2020年度と同額とした
    (消費税率10%適用の場合)
    一定の優良住宅:1,500万円
    その他の住宅 :1,000万円
  • 取得住宅の床面積要件を「50㎡以上」から「40㎡以上」とした(受贈者の合計所得金額が1,000万円以下が要件)
7.セルフメディケーション税制の延長と手続き改定
  • 対象医薬品を見直したうえで、5年間延長し2026年拠出分までとした
  • 確定申告の際に求められていた「健康の維持・増進、疾病予防への取組みを示す書類の提示・添付」を不要とした。ただし当該書類の5年間保存が義務付けられた
8.退職所得課税の算式改定

勤続5年以下の退職所得については、退職所得控除後の課税対象額のうち300万円を超える部分は2分の1を乗じることなく、全額に課税することとした(2022年分以降)

役員については、在籍5年に満たない場合「2分の1を乗じない」とする改定がすでになされていたが、本改定で一般従業員についても適正化が図られた

9.固定資産税は据置き

コロナ禍による不況・家計圧迫に鑑み、2021年度は、前年比で税額上昇が見込まれる場合でも、増額せず据置きとされた

10.株式譲渡所得等の「住民税課税方法の選択手続き」を簡便化

現在、株式譲渡所得や配当について、所得税と住民税で異なる課税方法を選択する場合、住民税の申告書を提出しなければならないが、これを不要とし、所得税確定申告書の中で、その旨、申告できることとした