3月28日に所得税改正法案が可決・成立した。個人関連の主なものは次の通り。
- 給与所得控除の引下げ
- 公的年金等控除の引下げ
- 基礎控除の引上げ
- 青色申告特別控除の引下げ
- 小規模宅地特例対象の縮小
1.給与所得控除の引き下げ
- 控除額を一律10万円引下げ(年収850万円以下)
(控除額の最低保証も引下げ:65万円 ⇨ 55万円) - 控除上限額の引下げ
「年収1000万円超は一律220万円」
⇩
「年収850万円超は一律195.5万円」
年収850万円超で下記該当者には控除額加算の特例あり
- 本人が特別障害者
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 同一生計で特別障害者に該当する配偶者・扶養親族がいる
追加控除額:{年収(1000万円上限)-850万円}×10%
控除額引下げは、実収入が変わらないのに所得増となるため、他の規定に影響を与える
たとえば配偶者(特別)控除の所得基準額は10万円ずつ引上げられる。つまり配偶者の所得が48万円以下なら配偶者控除が受けられることとなる(現行は38万円以下)。同様に配偶者特別控除の所得基準額も10万円ずつ引上げられる(年収目安は変わらず)。たとえば所得95万円までなら、控除を受ける者の所得が900万円以下の条件下で38万円の控除が受けられる » ご参照 「配偶者(特別)控除改定」 (本サイト内別投稿)
2.公的年金等控除の引下げ
- 控除額を一律10万円引下げ
- 上限額の新設(年収1000万円超は一律195.5万円)
- 他の合計所得による減額制度新設
公的年金等以外の所得計 減額の上乗せ 1000万円超2000万円以下 10万円 2000万円超 20万円
減額の上乗せ = 控除額のさらなる縮小 ⇒ 所得増
3.基礎控除の引上げ
- 控除額を一律10万円引上げ:38万円 ⇨ 48万円
(合計所得2400万円までが対象) - 高所得者の逓減制新設
合計所得 控除額 2400万円超2450万円まで 32万円 2450万円超2500万円まで 16万円 2500万円超 控除なし
- 給与所得者、公的年金受給者とも各控除額が引下げられても基礎控除額が引上げられるため、上限等に抵触する高所得者以外、課税所得に影響はない
- どちらの所得もない自営業者等の場合は基礎控除額引上げの恩恵のみ受けることとなる
- 給与と年金、両方の所得がある場合、10万円減額×2と10万円増額で、結果控除額が10万円減るパターンへの対処
追加控除額=給与所得(10万円限度)+公的年金等雑所得(10万円限度)-10万円
4.青色申告特別控除の引下げ
- 控除額:65万円 ⇨ 55万円
ただし「正規簿記+電子申告」等の要件を充足すれば65万円の継続可。また10万円の控除制度は従来通り運用される
5.小規模宅地特例の対象縮小
- 別居親族が相続した場合の要件厳格化
- 相続開始前3年以内に、次の者が所有する国内の家屋に居住したことがない
- 自己または配偶者
- 3親等以内の親族
- 特別な関係にある法人
- 当該家屋を過去にも所有したことがない
- 相続開始前3年以内に貸付を始めた場合、貸付用宅地の特例適用不可
ただし3年を超えて事業的規模で貸付をしている者の場合は、3年以内に開始した宅地も適用可
改正前 | 改正後 |
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相続開始前3年以内に、自己または配偶者が所有する国内の家屋に居住したことがない |
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実施日
項目1~4 | 2020年分の所得計算より適用 (住民税は2021年度課税分より) |
項目5 | 2018年4月以降発生の相続より適用 (2018年3月31日時点の貸付用宅地には「改正」不適用) |