相続関連法の改正

相続に関連する改正法が6日に成立したので主要項目をまとめた。

1.遺留分の改定

(A)遺留分の金銭債権化

現在 遺留分を侵害した遺言は、遺留分権利者に請求されれば侵害部分が無効となり、遺言者の意図が実現されない
改定後 遺留分権利者は侵害者に対する金銭債権を取得するのみで、遺言自体は有効性を維持する(直ちに債務支払いできない場合は、裁判所に申請し、猶予される可能性もあり)

(B)「生計資本等の贈与」に年限設定

現在 何年経とうが際限なく遡って持ち戻し、遺留分計算に算入される
改定後 相続開始前10年以内の贈与に限定される

遺留分請求者への贈与は年限なく持ち戻して侵害額が計算される

2.夫婦間の居住用不動産贈与の特例改定
現在 税制上は非課税贈与となり、相続時も持ち戻されないが、遺産分割計算における基礎額には含まれるため、その分、配偶者の遺産取得が減る
改定後 施行日以降の贈与は遺産分割の基礎額に含めない

「婚姻期間20年以上・2000万円まで」の要件は従来通り

3.被相続人の預貯金払出しに特例新設
現在 相続発生と同時に分割対象となるため、相続人全員の同意がない限り払出しできない
改定後 特例(A)仮払い制度の新設
家裁に遺産分割の調停・審判を申立ての上、仮分割の仮処分を申請できる
特例(B)一定割合まで単独払出しが可能に
払出し限度=口座残高×1/3×当該相続人の法定相続割合
(2018年11月追加情報)
上記限度内で、且つ、1金融機関150万円までと定められた
4.特別寄与料制度の新設
現在 相続人でない者(息子の嫁等)は寄与分の請求権なし
改定後 親族であれば相続人でなくても寄与分(特別寄与料)を請求できる

  • 請求期限は相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月以内
  • 請求上限は相続財産-遺贈価額

協議が整わない場合は家裁の審判による

(2019年3月追加情報)
特別寄与料の価額算出についての考え方が示された 本サイト内投稿 ご参照

5.自筆証書遺言の取扱改定

(A)一部は非自書でも可に

現在 全文自書が絶対条件
改定後 財産目録については、パソコン作成や、通帳コピー・不動産登記事項証明書等での代用が可能(ただし、全ページに署名・押印要)

(B)法務局での保管制度発足

原本保管のみならず、内容が電子データ化され保存される

< 法務局保管のメリット >

  • 遺言の紛失・隠匿・改ざんのリスク減
  • 保管申請時の形式チェックにより相続発生時の検認が不要に
  • 相続人・受遺者・遺言執行人は相続発生後、最寄りの法務局で電子データ化された遺言書画像(遺言書情報証明書)の交付を請求できる
6.配偶者居住権の新設
現在 配偶者が居住継続のために自宅を相続すると、預貯金など他の遺産取得枠が狭まる(住まいは確保したが資金がない状態)
改定後 新設される居住権は所有権よりも低価額となるため、他の遺産の取得枠減少を抑制できる(相続時に居住していることが前提条件)

配偶者居住権は登記することで第三者に対抗できる

(2019年3月追加情報)
配偶者居住権の評価額算式が示された 本サイト内投稿 ご参照

施行日

5の(B)および6 公布日(2018年7月13日)から2年以内の政令で定める日以降の相続に適用
(2018年11月に下記の通り決定)
5の(B)は2020年7月10日から
6は2020年4月1日以降の相続から
5の(A) 2019年1月13日以降に作成する遺言に適用
その他 公布日(2018年7月13日)から1年以内の政令で定める日
2019年7月1日から

< 留意点 >

  • 1の(B)および2については施行日以降の贈与に適用される(「施行日以降の相続」ではない)
  • 6の配偶者居住権について遺言に記す場合は、施行日以降に作成する